2005年03月25日

★イノベーションの本質 /野中郁次郎, 勝見明 著

私の採点 ★★★



著者: 野中 郁次郎, 勝見 明
タイトル: イノベーションの本質



読んでいて途中で挫折した。最後まで読んでも得るものはほとんどないと判断したからだ。俗にいう「後付け理論」のオンパレード。私が最も嫌う類の書籍である。
しかしこういう本がよく出版されるし、よく売れる。私はそのような方々に目を覚ませと言いたい。


誰もが、成功した人・会社の成功プロセスを聞きたがる。それは理解できる。私だって同じだ。成功者、成功企業に習いたいことは山ほどある。しかし注意してほしいのは、


成功するように仮説を立て、トライ&エラーで臨みながら、仮説に近付いて成功を勝ち取った。

  のと、

やってみたら成功した。


とでは、全然ニュアンスが違うということ。


はっきりいえば後者の事例はまったく参考にならない。たとえばビル・ゲイツがマイクロソフト社を起こしたときの逸話を聞いて、「俺もそうてみようか」などと考える人が果たして何人いるだろうか。もしそういう人がいたら、きわめておめでたい方である。現実逃避も甚だしい。

もしそんなことが実現できるような人物であれば、他人の成功体験なんて知りたがろうと思わないだろう。今、自分の立ち位置を把握せず、他人の成功事例を聞いてひたっているだけだ。

物語を知って楽しむだけならよいが、自分のビジネスに役立てようと考えているなら、もうプロジェクトX的な「成功エピソードの後付け理論」に振り回されるのはやめよう。
そんなことを学んでも意味がない。

本書は、ホンダ、サントリー、キヤノン、スタジオジブリ、海洋堂……など、商品開発秘話がこれでもか! これでもか! というぐらいにずらーっと載っている。商品開発をどのような組織で臨み、その中でどのような革新的(イノベーション)なアイデアが提示されたかを紹介している。

全部読めば、どれか読者の心にひっかかるものがあるかもしれない。何か大きなヒントをつかむことができるかもしれない。
だがもう一度タイトルを見てほしい。
イノベーションの本質
である。

数ある成功事例の中からイノベーションの本質を抽出し、どのような人材で組織を構成して革新的な発想を生み出していくのか、これを著者が体系的に整理して披露する本なのではないか?

これは個々の成功事例の研究結果であって、数ある成功事例の共通的な「本質」を抽出した解説本ではない。このままでは、経営者が朝礼で紹介する「ためになる話」のネタになるだけ。現実的にこの「本質論」が活用されることはないと思う。

ただ成功の事実を羅列するだけなら、週刊のビジネス雑誌を毎号しっかり読んでいたほうがましだ。

(とはいえ内容は濃いので、お気に召したら買いかも……。大企業の商品開発部向け)


【目次】
 ∴ まえがき
 ∴ 序 章  知識経営とクリエイティブ・ルーティン

 ∴ 第一章  製品の「コンセプト」にとことんこだわる
    ケース1 サントリー カラダ・バランス飲料「DAKARA」
     ポカリとアクエリアスの牙城を崩したコンセプトの勝利
      〜「場」=顧客との共体験が真のコンセプトを生む〜

    ケース2 本田技研工業「アコードワゴン」
     絶対価値追求型のホンダの車づくり
      〜「弁証法」と「仮説設定」でコンセプトを磨く〜

 ∴ 第二章  組織の「知」を徹底的に活用する  
    ケース3 デンソー「二次元レーザーレーダーシステム」
     “隠れた巨人”の驚くべき知識創造力
      〜深堀りの技術屋と横串のシステム屋のせめぎ合いが力を生む〜

    ケース4 キヤノン デジタルカメラ「IXY DIGITAL」
     「知」を切らないリストラがヒット商品となって花開く
      〜「サムライ・モデル」が可能にするキヤノンの強い綜合力とは〜

    ケース5 スズキ 五〇ccスクーター「チョイノリ」
     「一cc=一〇〇〇円」を実現したものづくりの知
      〜本質を極めるコスト意識を「型」として定着させる〜

 ∴ 第三章  「個」のコミットメントを限りなく高める
    ケース6 富士通「プラズマディスプレイパネル」
     個とネットワークとの「共創」により夢を実現する
      〜アメリカ型“傍観者の経営”と異なる“人間原理の経営”とは〜

    ケース7 ヤマハ「光るギター」
     個の挑戦が組織に「ミドルアップダウン」の動きを巻き起こす
    〜「友だちの友だちはみな友だち(スモールワールド・ネットワーク)」
         的な人脈をいかに生み出すか〜

    ケース8 黒川温泉観光旅館協同組合「黒川温泉」
     「個と全体」のバランスをとり、独特の世界を醸し出す
      〜「主語論理」と「述語論理」の矛盾をいかに解消するか〜

 ∴ 第四章 人の「才」を存分に発揮させる
    ケース9 日清食品 高級カップめん「具多 GooTa」
    「起業家ミドル」が生み出した大ヒットブランド
     〜自社製品を否定する最初の会社になる〜      

   ケース10 松下電器産業「遠心力乾いちゃう洗濯機」
    「理想を追い求める執拗さ」が持続的競争優位をもたらす
     〜理想の洗濯機は「中華鍋」から生まれた〜

   ケース11 ミツカングループ「におわなっとう」
    「知的体育会系」社員が市場と商品を結びつける
     〜仮説を崩され到達した「真実」は予想外のものだった〜

 ∴ 第五章 日々の「生活」や「実践」を根底から大切にする
      ケース12 スタジオジブリ 「千と千尋の神隠し」
     すべてのネタは「日常の対話」の中にある
      〜「主客一体」のジブリと「主客分離」のディズニーの違い〜

    ケース13 海洋堂「食玩」
     競争戦略ではなく「創発」的戦略でヒットを生む
      〜成功と失敗を反復する中から戦略が湧き上がる〜

 ∴ まとめ
    自分は何をやりたいのか
     ―脱・傍観者の経営をめざして




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posted by マーケ at 12:47| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(2) |  ★★★(お気に召したら) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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